完成予定0.00X%のネタをこっそり呟くためのブログ。半端なままでの更新が多くともそこはそっと見守ってあげてください&応援する気持ちが芽生えたら拍手を!(管理人がむせび泣いて喜びます)
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『今日は特別な日だから』
そう言って女は微笑んだ。食卓に並ぶ品は普段よりもひとつふたつほど質が良く、ささやかながらも飾り付けられた室内も何処か明るいく暖かにみえる。やがて家の戸を優しく叩く音がして、客の訪れを報せる。耳に馴染んだ鈍い音を軋ませて開いた其所からは、やさしげな眼をした男が顔を覗かせ、自分の名を呼びながら腕(かいな)を広げて笑む。その中に包まれて抱き締められて頬にキスを受けて、それから渡される綺麗な紙と柔らか帯に覆われた包み。そして――――
ぱちり。
目蓋を持ち上げれば、薄い肉壁に塞がれていた赤色が空気に触れる。その赤の視界に写り込むのは白い天井と光を反射するシャンデリア。沈み込む背中の弾力は馴れた革のもので、土足の脚で乗り上げた卓上には琥珀色のグラスが一つ。
瞬きひとつの間もなく現状を思い出す。現在地はボンゴレヴァリアー本部、その指令室。ちらと視線だけで時刻を確認すれば、そろそろ部下達が仕事を済ませて帰ってくる頃合いだろう。どうやら報告を待つ合間に少々寝入ってしまっていたようだ。
暗殺部隊のボスなどといっても平和なもので、自ら手を下す事などそうそうなく部下の報告を受けたり書類にサインをしたりとつまらない事務仕事が主である(それもXANXUSが目を通すのは幹部クラスの分のみ、それ以下はその幹部連中に押し付けているので尚更だ)。
今のように報告を待つ時間ほど無駄かつ暇なものはないが(ヴァリアーの任務に『失敗』などというものは存在しないのだから)、上司たる自分は報告を待たねばならぬ義務がある。
持て余した暇を潰す手段など銀色の部下に物を投げつけるか寝るかのどちらかで、だから彼にとっては居眠りなど些末なことのはずだったのだが…
――――チッ、
行儀悪く舌打ちをしてXANXUSはもとから鋭い眼をさらに細める。
目覚めが好いとは言い難く、しかし八つ当たるにもその対象が今は傍にない。
(…カスが!!)
任務でこの場にいない相手に役立たずめと毒づく。上司の中で標的としての認識が確定されてしまっている剣士にしてみればまったくもって理不尽な怒りである。
当たる相手もなく仕方がないと代わりにむしゃくしゃした気持ちのままにグラスを煽る。しかし氷が溶け薄まったそれは温く不味い。気分は更に降下した。
「……………、くそったれ、」
額に落ちる前髪を乱雑にかきあげ吐き捨てるように呟いてみるも、それは普段の彼と比べればなんとも弱い響きをしていた。
馬鹿馬鹿しい――あんな夢など、その一言に尽きるではないか。
そのはずなのに、脳裏には夢の残り火が燻り、望みもしないのに無意味に意識を寄らせようとする。
下らない女。そんな女のもとで下らない妄言を信じきっていた下らない子供。…それは、塵も残さず燃やし尽くし葬りさった下らない過去ではあるが、その灰の記憶の中にすらあんなものは存在しない。
あの場所での暮らしはささやかな祝いのためにできる出費の余裕などあるはずもなく、その日に子供を訪ねてくる男などそれこそ夢物語。(居もしない父親なんて、来れるはずもない)
(だが、“今日は特別な日だ”…それは確かにあの女がその日になれば必ず口にした言葉ではあった――偉大なるボンゴレ九代目との子供を授かった特別な日だ――と、物心がついた頃から繰り返し。)
大体、自分だってあんなガキのままごとのようなもの、けして望んでなどいなかった。ボンゴレ十代目になるべき男ならばこんな掃き溜めのような場所などではなく相応しい場所で立場に見合った盛大な祝いを受けるものと思い、そしてボンゴレに引き取られてからはその様に扱われてその日を過ごしていたのである。
だから、あんな風に自分の生まれた日を祝われた覚えなどないはずで。
――――あんな風に祝われたかったなどという馬鹿なこと、あるはずがない。(夢は願望を写す、なんて!!)
夢の影を振り払うように己に言い聞かせていると、見知った存在が近づいてきたことに気付き意識を平静に引き上げる。
足音もなく気配もないのは暗殺者として当然のことであるが、しかしそれでも察することができるのは自分の実力故か、それとも相手の修行不足か。まあそれ以前に――
「う゛お゛ぉぉぉい!!帰ったぜぇ―――、っ!!」
ガツンッ … カシャ、ン。
ノックもなしに扉を開けた銀色の剣士の額に、入室と同時に手元のグラスを無造作に投げつける。
――…それ以前に、この夜中という時間帯を考慮に入れない騒音が問題である。(暗殺者ならもっと静かにひっそり行動してみせろ。)
そんなことを考えつつ先程できなかった八つ当たりも兼ねて挨拶がわりの嫌がらせを実行するXANXUS。
一方スクアーロは、上司の挨拶がわりの暴力に毎度のことながら一応何すると文句を言いつつ、しかし投げつけられたものが空のグラスであったことにおや?と思った。普段ならばブランデー入りのまま投げつけられて髪がベトベトになるか、あるいはグラスではなくボトルが飛んでくるのだが。
まぁ受ける側としてはレベルが軽度なことに文句などないと、気にせず本来の目的(任務報告)を果たす。
「――――とまぁ、以上だぜぇ。特に問題もなく任務終了だぁ。」
「ふん」
そういって報告を締めくくるスクアーロにXANXUSは当然だと鼻を鳴らす。
下がれと無言で示せば、去り際に「あぁそうだぁ…」ヒラリ、小さな封筒のようなものを投げ渡される。
「?」
「せっかくだから行ってやれよぉ。…たまには素直になってなぁ」
封筒を開けながら言われた内容に、中身に目を通してすぐさま今度こそブランデーの瓶を投げつけた時には、銀の背中は一瞬の差で扉の向こうに消えたあとだった。
「…カス鮫め。」
チッ、と本日何度目かの舌打ちをして封筒に納められていた一枚のカードを放る。
磨きあげられたデスクの上を滑るそれは、達筆な字で一言添えられたバースデーカード。
――――Buon Compleanno. Mio figlio.
九代目からの、(父親から息子への、誕生祝いの招待状)。
毎年、欠かさず送られてきたカード。贈られてきた言葉。(氷の揺籠で、眠りにつくその前も…その後も。)
一度も返されなかった返信、それでも変わらずに。(不器用に)(暖かに)
遠いあの日、
こどもが、
望んだならば。
答えていれば、
迎えられたのだろうか。
寒さに(孤独に)震える幼い身を、
あたたかな腕で包み込んで。
(それは、いまでも?)
――――それは、いつまでも。
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あとがきというか、補足というか
と言うことで、XANXUSさんお誕生日おめでとうございます!
今年はほんのりシリアスチックにでもほのぼの系!を目指したXANXUS生誕祝話です。
九代目親子家族愛がテーマ。
作中で明記していないためわかりずらいかなぁという部分が多大にあるので(文才が足りない。要修行です orz)、ここで補足などさせてもらいます。
前半でXANXUSが見た夢→
貧困街で実母と暮らしていた頃に母が誕生日祝いをしてくれて、そこにプレゼントをもった父親が帰ってきて抱き締めてくれる。そんな子供の夢。
XANXUSさんだってほんとはちいさいころは父母そろっての愛情を欲しがっていたんじゃないかなぁと思います。誰だって子供なら当然に求める親の愛と家庭的な幸せ。それを夢にみたってかんじが伝わっていればいいなぁ…
カード~ラストの語り→
九代目はXANXUSを引き取ってから毎年どんなに仕事がいそがしくても誕生日になるとバースデーカードを送っていた、という裏設定。
バースデーカードには、『Buon Compleanno. Mio figlio.(誕生日おめでとう。わが息子よ。)』と書かれています。
毎年同じ一言だけ。(これは子供がいないティモッテオさんは、引き取った子供にどんな風に愛情を注げばいいかわからなくて、これしか書けないってかんじです。)
彼なりに親子として絆を築いていきたいのですが、ボスとしての仕事が忙しくて親子2人でゆっくり交流する暇もなく、またXANXUSの方は『九代目の実子』認識の周囲が後のボンゴレボスとして教育やら派閥やらごますりやらと騒がしくて、ますます九代目は親子としてどう接すればいいかわからないままにすぎていくという。
そして10月10日になると、取り巻きにちやほやされてる子XANXUSは盛大な誕生日パーティーを開かれてそれに参加するのですが、九代目は仕事があるので欠席。それでもせめてもとカードを贈るわけです。
バースデーカード=招待状というのは、『君は私の息子なんだからいつでも甘えに来ておくれ。』という気持ちを密かに託しているからです。(そんなん気付けるか!っくらいわかりずらくて不器用なメッセージ/苦笑)
そしてXANXUSもXANXUSで甘え方がわからないから一度も九代目からのカードにありがとうの返事を示したことがない、という。
でもってそんな2人を知っていて後押ししてあげるスクアーロなのでした。
…補足多すぎ;
今年はほんのりシリアスチックにでもほのぼの系!を目指したXANXUS生誕祝話です。
九代目親子家族愛がテーマ。
作中で明記していないためわかりずらいかなぁという部分が多大にあるので(文才が足りない。要修行です orz)、ここで補足などさせてもらいます。
前半でXANXUSが見た夢→
貧困街で実母と暮らしていた頃に母が誕生日祝いをしてくれて、そこにプレゼントをもった父親が帰ってきて抱き締めてくれる。そんな子供の夢。
XANXUSさんだってほんとはちいさいころは父母そろっての愛情を欲しがっていたんじゃないかなぁと思います。誰だって子供なら当然に求める親の愛と家庭的な幸せ。それを夢にみたってかんじが伝わっていればいいなぁ…
カード~ラストの語り→
九代目はXANXUSを引き取ってから毎年どんなに仕事がいそがしくても誕生日になるとバースデーカードを送っていた、という裏設定。
バースデーカードには、『Buon Compleanno. Mio figlio.(誕生日おめでとう。わが息子よ。)』と書かれています。
毎年同じ一言だけ。(これは子供がいないティモッテオさんは、引き取った子供にどんな風に愛情を注げばいいかわからなくて、これしか書けないってかんじです。)
彼なりに親子として絆を築いていきたいのですが、ボスとしての仕事が忙しくて親子2人でゆっくり交流する暇もなく、またXANXUSの方は『九代目の実子』認識の周囲が後のボンゴレボスとして教育やら派閥やらごますりやらと騒がしくて、ますます九代目は親子としてどう接すればいいかわからないままにすぎていくという。
そして10月10日になると、取り巻きにちやほやされてる子XANXUSは盛大な誕生日パーティーを開かれてそれに参加するのですが、九代目は仕事があるので欠席。それでもせめてもとカードを贈るわけです。
バースデーカード=招待状というのは、『君は私の息子なんだからいつでも甘えに来ておくれ。』という気持ちを密かに託しているからです。(そんなん気付けるか!っくらいわかりずらくて不器用なメッセージ/苦笑)
そしてXANXUSもXANXUSで甘え方がわからないから一度も九代目からのカードにありがとうの返事を示したことがない、という。
でもってそんな2人を知っていて後押ししてあげるスクアーロなのでした。
…補足多すぎ;
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